・ひろがるスカイ!プリキュア 49話 感想

「ガザ〜私たちは何を目撃しているのか〜」を最後まで観てた。 私たち(Us)とあいつら(Them)の境界線はあいまいで、昨日まで「私たち」だったものが今日から「あいつら」になったりする。おれの中では、石川県の被災者とホームレス、パレスチナ人その他70億人以上の人間が「会ったことも話もしたこともない人間」なんだけど、UsとThemの間に境界線を定めるための理路がどこにあるのかわからねえ。 地球の裏側の人間にも共感して涙を流せるし、ホームレスに自己責任と言い放って見殺しにできる。 そんなことを考えながらひろがるスカイ!プリキュア 49話を視聴していた。 今日のプリキュア、たった数分でいまの全人類が必要としているものを描ききってしまったぞ……! 大切な誰かを助けるために人は闇を欲してしまう。最初はただ目の前の人を救いたかっただけなのに、力に飲み込まれてアンダーグエナジーの器になる。ヒーローと邪悪は近しい位置にある。強い正義感を持っているからこそ、より深い闇に堕ちていく。 おれにはわかるんだ。ましろさんを助けるためならどんな代償だって払う。たとえそれが闇に手を染めることでも。理性ではダメだと分かっていても、心が、魂が、暗い力を欲してしまう。船底に空いた亀裂から海水が染み込むように、心臓に空いた絶望にアンダーグエナジーが満ちる。そしてそれは今まで感じたことがない全能感だった。弱い私を塗りつぶしてくれる、圧倒的な暴力。この力があればもう絶望することも、弱さにうちひしがれることもない。理性では拒絶しながらも、強大な力にソラは陶酔していく。憎いあんちくしょうをぶん殴ったとき、ソラは絶対に気持ち良かったと思うんだよ。 それが闇だからだ。くらやみはおれたちの人間性を貪って、圧倒的な全能感を与えてくれる。他人の命を踏みにじれるほどの力と引き替えに、非人間的なものへと作り変えられる。 だが人間が人間に向ける眼差しだけが、握りしめられた拳を解きほぐす。言葉でも正義でもなく、人間を見る眼差しだけにしか持ち得ない力がある。それを今期のプリキュアは完全に表現した。